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2011/02/13

『偏差値』はどうやって計算するの?

 アーカイブ:「数の性質」

中学受験を始め,高校受験・大学受験でもおなじみの『偏差値』.
「模試で偏差値70出した」となると,「すごく賢い!灘中学も合格圏内!」ということになりますが,そもそも偏差値って何なのでしょうか?

偏差値というのは簡単に言うと「平均を50としたとき,自分は平均からどれくらい離れているか」を数値化したものです.
具体的な計算方法は次の通りです.

偏差値=(得点-平均点)÷標準偏差×10+50

平均点は中学受験算数でもおなじみの通り,「全体の合計÷人数」です.
標準偏差』というのは大学で学ぶ統計学に登場しますが,簡単に式で表すと,

(標準偏差)2=(得点-平均点)2の合計÷人数

となります.(標準偏差)2のことを『分散』と言います.

では具体的な例を見ながら偏差値を計算してみましょう.
20人のクラスで10点満点のテストを行った結果,点数が以下の通りだったとしましょう.


点数人数
21
32
44
56
65
71
81

上の表から平均点を求めると,
平均点=(2×1+3×2+4×4+5×6+6×5+7×1+8×1)÷20=4.95点
となります.

また,
(標準偏差)2={(2-4.95)2×1+(3-4.95)2×2+(4-4.95)2×4+(5-4.95)2×6+(6-4.95)2×5+(7-4.95)2×1+(8-4.95)2×1}÷20=1.9475

と計算できるので,標準偏差=√1.9475=1.3955・・・≒1.40
となります.

平均と標準偏差が分かったので,偏差値が求められます.
得点が2点のときの偏差値は
(2-4.95)÷1.40×10+50≒28.86
得点が3点のときの偏差値は
(3-4.95)÷1.40×10+50≒36.03
得点が4点のときの偏差値は
(4-4.95)÷1.40×10+50≒43.19
得点が5点のときの偏差値は
(5-4.95)÷1.40×10+50≒50.36
得点が6点のときの偏差値は
(6-4.95)÷1.40×10+50≒57.52
得点が7点のときの偏差値は
(7-4.95)÷1.40×10+50≒64.69
得点が8点のときの偏差値は
(8-4.95)÷1.40×10+50≒71.86

となります.
平均点は4.95点なので,得点が5点だとほぼ偏差値は50となります.点数が上がると偏差値も上がり,点数が下がると偏差値も下がることが分かります.

※ちなみに平均点がものすごく低いのに自分だけものすごく高い点数をとった場合,偏差値が100を超えることもあります.(逆にマイナスになることもあり得ます)


ところで,偏差値を計算するときには忘れてはならない重要なことがあります.
それは偏差値の計算は,データの分布が『正規分布』に従うことを前提としている,ということです.

正規分布って何?と思われると思いますが,ある事象についてデータを収集したとき,そのデータの分布はデータ数が多ければ多いほど正規分布に近づくと言われています.実験での測定誤差や工場での製品生産の寸法誤差なども正規分布曲線に従うものとして計算することが多いです.

正規分布曲線は平均と標準偏差の値によって決まりますが,偏差値というのは「平均が50,標準偏差が10」の場合の正規分布のことです.つまり先ほど紹介した偏差値を求める式「偏差値=(得点-平均点)÷標準偏差×10+50」とはつまり,テストの点数分布を「平均50,標準偏差10の分布」になるよう変換する式であると言えます.

平均50,標準偏差10の正規分布曲線を図で表すと次の通りです.

横軸が偏差値,縦軸は頻度を表しています.この場合,偏差値50の頻度が最も高く,平均から離れるにつれ,頻度も下がるという直感的にもイメージしやすい曲線となっています.


では,上のテスト結果を元に,実際の得点の分布と正規分布曲線との比較をしてみましょう.

青い棒グラフが実際の得点の分布,赤い線が正規分布曲線を示しています.図を見て分かるように,このテスト結果の分布は結構正規分布に近い分布になっていることが分かります.

しかし,テストによっては正規分布とは異なる分布になることがあります(得点のピークが二つできる場合など).その場合「偏差値」の数値は単なる参考値になり,数学的な意味は薄くなります.

模試が終わって成績表を見たとき,自分の偏差値を確認することはあっても,点数の分布が正規分布になっているかを確認することなんてまずないのではないでしょうか?日本では絶対的な地位を誇る「偏差値」ですが,受験者の点数の分布によっては必ずしも絶対的に正しい指標とはならないことには注意が必要です.


※ちなみに2010年の各中学の偏差値はこちらを参考(日能研入試情報より)

2011/01/27

円周率を少し詳しく考える

 アーカイブ:「数の性質」

図形の計算でおなじみの「円周率」.小学校では円周率を「3」あるいは「3.14」として計算しますが,そもそも円周率って何なのでしょう?どうやって求めるのでしょう? 今回はそんな「円周率」について少し詳しく考えてみることにします.

■ 円周率とは
円周率とは数学における定数のひとつです.「π(パイ)」と表記します.その値は3.1415…と無限に続くのはよく知られている通りです.円周率とは「円の周の長さと直径の比」のことであり,要は「直径の■倍が円周の長さである.」と書いたときの「■」にあてはまる数が円周率になります.

例えば1/3という分数は小数にすると0.3333…と無限に続きます.1/7であれば0.1428571…と無限に続きますが,中学受験算数の問題にもよくあるように,分数を小数に直すときは必ず数字の表れ方に規則があります(これを循環小数と言います).しかし円周率にはそのような数字の表れ方に規則がまったくありません.数学上は「超越数」と呼ばれます.

※「超越数」とは正確には「代数方程式の解とならない複素数」のことです.


■ 円周率の歴史
古代エジプトやバビロニア,インド,ギリシアの数学者は円周率が3より大きいことを既に知っていたといわれます.彼らは円の面積が「半径×半径×円周率」であることも知っていたようです.「アルキメデスの原理」で有名なアルキメデスも円周率の研究をしています.彼は円周率が223/71<π<22/7であることを発見しています.(小数で表すと3.14084・・・<π<3.14285・・・)
アルキメデスは戦争中も円の研究をしていましたが研究に夢中になるあまり,自分の研究の邪魔をしたローマの兵士を怒鳴りつけたことから殺されてしまったと伝えられています.


■ 円周率の計算
円周率は実は計算式によって求めることができます.
ここではいくつか例を挙げてみましょう.代表的なのは次の式です.
【式その1】

上の計算を繰り返せば繰り返すほどその値は円周率に近づきます.
この式は既にインドで14世紀には発見されていました.

【式その2】

このように掛け算で求めることもできます.これはウォリスの公式と呼ばれます.

【式その3】


これはオイラー(18世紀の数学者)のゼータ関数によって導かれる式です.

円周率を求める式には,上に挙げた例以外にも様々なものがあります.


■ 円周率の出現
円周率を使う場面といえば「平面図形」の計算ですが,ここでは図形の計算以外で「円周率」が現れる場面を紹介してみたいと思います.

例えば「2つ自然数を取り出したとき,その2つの数の最大公約数が1である確からしさ」を計算すると実は「6/π²」になります.不思議なことですね.

他にも「長さ2cm間隔で何本も平行線を引いた平面の上に長さ1cmの針を落としたときに,針が平行線と交差する確からしさ」は「2/π」 となります.ここにもやはり円周率が出現します.

「円」や「図形」の範囲以外のも実は円周率が潜んでいることがある,ということはとても興味深いことです.

■ パソコンで円周率を計算する
円周率の計算は現代においてはコンピュータが利用されています.パソコンの計算能力を測定する際にも円周率の計算プログラムが用いられることがあります.
例えば,パソコンに100万桁の円周率の計算をさせて,答えが出るまでの時間が短ければ短いほど「高性能な」パソコンだというわけです.このプログラムは東京大学の金田研究室が開発した「スーパーπ」が有名です.
(参考:http://www1.coralnet.or.jp/kusuto/PI/ スーパーπの紹介ページ)

2011/01/05

ユークリッド互除法を図で考える

 アーカイブ:「数の性質」

ユークリッド互除法はこちらで解説している方法で式にあてはめてさえいけば機械的に求めることができます.しかし,計算の意味を理解せずに利用するのはあまり好ましいことではありません.

このページではユークリッド互除法の計算の意味を図を描きながら考えてみることにします.
ここでは前の例と同じ「221と323」で考えてみましょう.

これを式で求めると,

①323 ÷ 221 = 1・・・102
②221 ÷ 102 = 2・・・17
③102 ÷ 17 = 6

答え:17

となりました.

この計算を次のような長方形を使いながら考えてみます.
221と323の最大公約数を求めるというのは,「この長方形を最も大きな正方形でぴったり埋めようとしたとき,その正方形の一辺はいくらになるか」という問題に置き換えられます.

①の計算は,まずこの長方形の中に「最も大きな正方形をつくってみる」ことを示しています.これを図で表すと次の通りです.

上の図で黄色で示しているように,「最も大きな」正方形の一辺はこの長方形の短辺,すなわち221になります.
ですので①の式「323 ÷ 221 = 1・・・102」は,「この長方形には一辺の長さが221の正方形が1つだけ入り,横102,縦221の長方形が余る」ことを示していることになります.


同様に②の計算は,「①の計算で余った横102,縦221の長方形の中に最も大きな正方形をつくってみる」ことを示しています.これを図で表すと次の通りです.
上の図で緑色で示しているように,「最も大きな」正方形の一辺は余った長方形の短辺,すなわち102になるので,②の式「221 ÷ 102 = 2・・・17」は,「この長方形には一辺の長さが102の正方形が2つ入り,縦17,横102の長方形が余る」ことを示しています.


③の計算も同様に,「②の計算で余った縦17,横102の長方形の中に最も大きな正方形をつくってみる」ことを示しています.これを図で表すと次の通りです.
上の図で水色で示しているように,「最も大きな」正方形の一辺はこの長方形の短辺,すなわち17になるので,③の式「102 ÷ 17 = 6」は,「この長方形には一辺の長さが17の正方形がちょうど6つ入る」ことを示しています.

このことから,最初の縦221,横323の長方形を最も大きな正方形でぴったり埋めるとき,そのときの正方形の一辺は17である,すなわち221と323の最大公約数は17であることが分かるのです.

関連情報:
ユークリッド互除法を利用して最大公約数を求める

2011/01/02

ユークリッド互除法を利用して最大公約数を求める

 アーカイブ:「数の性質」

二つの数の最大公約数を求める・・・これは中学受験算数ではかなり頻度の高い計算です.
通常はすだれ算を使えば比較的簡単に求めることができます.しかし,例えば「221と323の最大公約数」を求めなくてはならなくなったとき,これはすだれ算でもなかなか計算することができません.
答えは17なのですが,これをすだれ算で出そうとすると,素数を小さい順に当てはめていくしかありません.2数の公約数が大きな素数である場合はその数を求めるのは簡単なことではないのです.

ところが今回紹介する「ユークリッド互除法」を使うと,どんな2数であっても確実に最大公約数を求めることができるようになります.


■ ユークリッド互除法の計算方法

aとbの2数の最大公約数を求めたい場合の計算方法は以下の通りです.

a ÷ b = c・・・d

b ÷ d = e・・・f

d ÷ f = g・・・h




と順次計算をすすめると




p ÷ q = r・・・s

q ÷ s = t

このように最終的には必ず割り切ることができます.
そしてこの時,最後の計算に現れる「s」がaとbの最大公約数なのです.



~221と323の場合~

323 ÷ 221 = 1・・・102

221 ÷ 102 = 2・・・17

102 ÷ 17 = 6 (割り切れた)

よって最大公約数は17と求まります.


関連情報:
ユークリッド互除法を図で考える